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| 犬の癌 |
●肥満細胞腫 (症状) 主に皮膚に見られ、高分化したもの(比較的に悪性度が低いがんのこと)は、直径1〜4cmの弾力のある腫瘍で、多くは表面に毛がありません。未分化のもの(悪性度が高く、進行の早いがんのこと)は、大きめで表面に潰瘍ができていたり、自傷したりして、出血が見られることがあります。また、周囲が赤く腫れて、ぶよぶよしていたり、ひどい皮膚炎を起こしているように見えることもあります。 また、皮膚の下(皮下)にできた肥満細胞腫は、脂肪腫などと間違われることがあります。このように肥満細胞腫は様々な外見を持つため、見た目からは腫瘍の種類や悪性度を判断することは困難です。 また、がんが転移したり、全身に広がったりすると、消化管での炎症や出血が起こり、血のまじった嘔吐や下痢がみられたり、食欲不振を生じることがあります。ときに全身性のショック症状を引き起こし、死に至ることもあります。 (原因) 犬種による要因や慢性的な炎症も関与か肥満細胞腫の原因ははっきりとはわかっていません。ただし、平均発症年齢は9歳とされていますが、若齢犬でも発症することから、犬種による素因も考えられています。また、発症の要因としては、慢性的な炎症の関与も示唆されています。 (治療) 肥満細胞腫の治療は、腫瘍のタイプによって異なります。「高分化型」といって腫瘍細胞の形態や機能が比較的正常な細胞に近い腫瘍では、腫瘍の境界がはっきりしているため、腫瘍を切除する外科的手術を行います。未分化型のものや全身に肥満細胞が転移したもの、切除や放射線治療などが不可能なものの場合では、化学療法がとられることがあります。 (予防) 肥満細胞腫の予防は困難です。腫瘍がまだ小さく転移していない段階で早期発見し、早期治療に努めることが重要になります。 ●肛門周囲腺腫 (症状) 肛門周囲腺腫では、肛門周囲腺という肛門のまわりの腺組織に硬いしこり(腫瘍)ができます。犬がしこりを気にしてお尻を舐めたりかいたりすれば、出血や化膿がみられ、潰瘍ができることもあります。さらに悪化すれば、排便が困難になることもあります。 (原因) 肛門周囲腺腫の発生には男性ホルモンが関係しているため、多くが去勢をしていないオスに発症します。しかし、ごくまれに避妊手術を済ませたメスにも発生することがあります。 (治療) 肛門周囲腺腫の治療には、腫瘍を切除する外科手術をおこないます。しかし、再発する可能性が高いため、手術後も注意が必要です。また、腫瘍を取り除くのと同時に去勢手術をおこないます。 (予防) 肛門周囲腺腫の一番の予防法は去勢手術です。若いうちに去勢しておけば、肛門周囲腺腫になる確率は低くなります。 ●扁平上皮がん (症状) 皮膚や口腔内にカリフラワー状のしこりや赤く硬いしこりとして現れますが、しこりをつくらないこともあります。皮膚に発生した場合には、爪の周り、四肢、腹部、陰のうなどの皮膚に脱毛が見られ、皮膚がただれ、びらん状になり、潰瘍ができます。口腔内などの粘膜に発生した場合には、体表と同じように皮膚にただれや潰瘍が見られ、ときには出血も起こります。粘膜にできる扁平上皮がんは増殖が速く、リンパ節への転移が起こりやすい傾向があります。 (原因) 扁平上皮がんの原因は現在のところ明確ではありません。 (治療) 扁平上皮がんの患部やその周辺部を外科手術によって切除します。腫瘍が切除不可能な場合は、切除手術のほかに、放射線治療や化学療法などを併用することがあります。 (予防) 扁平上皮がんは、早期発見・早期治療が大切です。日頃から愛犬のボディチェックなどを行い、体表上や口の中にしこりがないか観察するようにしましょう。 ●乳腺腫瘍 (症状) 特徴的な症状として、乳腺に「しこり」が見られます。「しこり」の大きさは数ミリのものから数十センチのものまでと様々です。妊娠してもいないのに乳汁が出ることがあり、時に膿や血が混じっていることもあります。炎症性乳がんの場合には乳腺付近の皮膚が赤く腫れ、痛みをともない、皮膚炎や乳腺炎と間違うこともあります。 (原因) 乳腺腫瘍のはっきりした原因は、まだ明らかになっていません。しかし、避妊手術の有無や手術時期が発症率と深く関係するだけでなく、乳腺腫瘍の多くが性ホルモンに対する受容体をもつため、性ホルモンが危険因子と考えられています。 (治療) 乳腺腫瘍の治療は、外科的手術によって腫瘍を切除します。この際に避妊していない場合は同時に避妊手術を行う場合もあります。腫瘍の切除範囲は、腫瘍の種類や発生部位、転移の有無、犬の一般状態などに応じて変わってきます。 (予防) 乳腺腫瘍は、最初の発情前に避妊手術をおこなうことで、発生する確率が格段に低くなります。愛犬に出産させることを希望しない場合は、早めに避妊手術を受けさせると良いでしょう。また、日頃から小さなしこりや腫瘍がないか、体全体を触ってチェックすることが、早期発見につながります。 ●悪性黒色腫(メラノーマ) (症状) 口腔内の粘膜や舌に黒色の腫瘍ができます。腫瘍はびらん、潰瘍状になることもあります。腫瘍ができるのと同時に、口臭やよだれが多くなり、口から出血が見られることもあります。いったん発症すると進行が速いため、発見したときには腫瘍がすでにあごのリンパ節や肺などに転移している可能性があります。 (原因) 悪性黒色腫は、色素(メラニン)をつくる細胞ががん化するのが原因です。腫瘍の多くは黒い色をしたもの(有色素性黒色腫)ですが、黒くないもの(無色素性黒色腫)もあります。 (治療) 悪性黒色腫の治療では、腫瘍があごの骨まで達している場合は、外科手術でその骨まで一緒に切除します。口腔の奥に腫瘍ができている場合は、患部を適切に切除するのが難しく、予後はそれほど良くありません。また、わずか数ヵ月で再発することも多いので、手術後も定期的に検査を受けるなどの注意する必要があります。 (予防) 悪性黒色腫の予防は難しいため、早期発見・早期治療が何より大切です。愛犬が若いうちから、月に1回は口を大きくあけさせ、口の中に異常なしこりや潰瘍などがないかチェックするようにしましょう。 ●骨肉腫 (症状) 骨肉腫になると、激しい痛みが生じて、足を引きずるなどの跛行や患部の骨が腫れるなどの症状が現れます。骨肉腫は四肢によく発生しますが、まれにアゴの骨などにも発生することがあります。骨肉腫は進行がとても速いうえに転移しやすく、発見された時点で、すでに肺に転移していることがよくあります。 (原因) 骨肉腫が発生する原因は明らかになっていませんが、ゴールデン・レトリーバー、グレート・ピレニーズ、ラブラドール・レトリーバー、シベリアン・ハスキーなどの大型犬に多く発生します。また、年齢的には7〜8歳前後からの老犬によく発生しますが、2歳頃の若齢犬に発症することもあります。 (治療) 骨肉腫は転移しやすいため、外科手術で腫瘍のある足を切断し、手術後に抗がん剤の投与を続けるのが一般的な治療となります。早期であれば腫瘍の摘出後に足の骨を移植する治療をおこなう場合もあります。骨肉腫が完全に治るのは難しく、これらの外科手術によって完治する場合もありますが、残念ながら再発も多く見られます。足の切断手術をせずに放射線治療をおこなう場合もありますが、あくまで痛みの緩和が主であり、治癒は期待できません。 (予防) 骨肉腫の予防は難しいため、早期発見・早期治療が何より大切です。上記の症状が見られたら、できるだけ早く動物病院で診察を受けましょう。 ●悪性リンパ腫 (症状) 悪性リンパ腫は、体のどこのリンパががん化するかによって症状が異なります。 「多中心型リンパ腫」では、下あごや腋の下、股の内側、膝の裏など、体表のリンパ節が何か所も腫れるほか、元気が少しなくなる、食欲が少し低下するといった症状が見られることがあります。症状が進むにつれて、運動不耐性(運動をしたがらないこと)や食欲不振、嘔吐や下痢が見られるようになり、末期では痩せてきて、免疫力も低下し、肺炎や膀胱炎など、様々な感染症にかかりやすくなります。 「消化器型リンパ腫」では、消化管のリンパ組織やリンパ節が腫れるもので、これにともない下痢や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が見られます。 「皮膚型リンパ腫」では、皮膚に腫瘍として現れるもので、大きさの様々なできものや紅斑、脱毛など、様々な皮膚病変が見られます。皮膚型は、皮膚に腫瘍ができる脂肪腫や肥満細胞腫などの他の腫瘍や皮膚病などと見分けがつかないことがあります。 この他、「縦隔型リンパ腫」では、胸腔内にあるリンパ組織が腫れるもので、これにともなって頻呼吸(呼吸の回数が増加すること)、咳やチアノーゼなどの呼吸器症状が見られます。 (原因) 悪性リンパ腫が発症する原因は解明されていません。犬にもっとも多いのが「多中心型リンパ腫」で、リンパ腫の大半を占めます。犬種ではゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ボクサー、バセット・ハウンド、セント・バーナードなどがリンパ腫になりやすい傾向にあります。 (治療) 悪性リンパ腫の治療は、診断の確定後、おもに化学療法(抗がん剤投与)を行います。しかし、リンパ腫のタイプによっては、外科的な処置などが必要となります。リンパ腫のタイプや進行程度、化学療法への反応などによって、その予後は様々です。 (予防) リンパ腫は、原因がはっきりしないため予防は困難です。したがって、早期発見と早期治療が何より大切です。発症しやすいといわれる犬種を飼っている場合は、日頃からあごやわきの下、足のつけ根などのリンパ節を含め、全身の皮膚に腫れやしこりがないか、愛犬のボディチェックを行いましょう。 ●前立腺腫瘍 (症状) 前立腺腫瘍になると、排尿障害(尿が出にくくなること)、便秘などの症状が現れます。進行して腫瘍が影響を及ぼす範囲が腰やお腹にまで広がると、痛みを感じて歩くときに足を引きずることがあります。さらにはリンパ節や肺などの他の部位に転移すると、さまざまな障害が見られるようになります。 (原因) 前立腺腫瘍の原因はまだ明らかになっていません。性ホルモンが関与していると考えられていますが、明確ではありません。 (治療) 前立腺腫瘍は、発見したときにはすでにリンパ節や肺に転移していること多く、有効な治療法はありません。前立腺の摘出手術を行うこともありますが、予後はあまり良くありません。 (予防) 前立腺腫瘍の予防法はありません。上記の症状に心当たりのある場合は、早めに獣医師に相談しましょう。 ●脳腫瘍 (症状) 脳腫瘍の症状は、腫瘍が良性か悪性かに関わらず、脳のどの部位に腫瘍ができているかによって異なります。発症しても何も症状が見られないこともあれば、てんかん様発作のみが見られたり、斜頸や旋回運動、運動失調、眠振(がんしん:眼球が揺れ動くこと)といった症状や顔面マヒなどが見られることもあります。また、異常な行動を取るようになったり、性格が変化したり、いつも眠ってばかりいたりと、認知症に間違われるような症状が認められることもあります。 (原因) 脳の細胞が腫瘍化してできる「原発性脳腫瘍」と、体のほかの部位にできた悪性黒色腫(メラノーマ)や悪性リンパ腫(リンパ肉腫)、血管肉腫や乳腺がんなどが、脳に転移して、あるいは鼻や耳、頭蓋の骨など、脳に近い部位にできた腫瘍が脳に浸潤(しんじゅん:しみ込むように別の部位にがんが広がること)してできる「続発性脳腫瘍」があります。 (治療) 脳腫瘍の治療では、腫瘍の部位や種類によって化学療法や外科的手術、放射線療法などが単独で、あるいは、いくつかを組み合わせて行われます。また、脳腫瘍にともなう炎症や浮腫(ふしゅ:痛みのないむくみのこと)を抑えたり、てんかん様発作をコントロールするため、抗炎症薬などによる内科的治療を行うこともあります。 (予防) 脳腫瘍は予防が難しい病気です。そのため、早期発見と早期治療が何よりも大切です。疑わしい症状が見られる際は、動物病院で検査を受けるようにしましょう |
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